アキレス腱断裂は手術しなくても治る！？

緊急医の帰り道、応急処置だけで明後日まで待つってのはどうにも不安だったので、いつもお世話になっている整骨院の先生に電話をかけました。

この先生とは学生の頃から、かれこれ４年の付き合いで、捻挫、骨折、肉離れ、指の脱臼･･･などなどいつもお世話になりっぱなし。地元では評判が良く、国体のトレーナーなんかも務めるその業界では顔の広い先生です。

ちなみに顔はスーパーマリオそっくり 。私は親しみを込めて「マリオ」と呼んでいます（本人の前で面と向かっては呼んでませんが^^;）

さすがに今回のアキレス腱断裂は、整骨院とは畑違いかな？と思いましたが、いつも私のケガの悩みを親身に聞いてくれるマリオ。今回も的確なアドバイスや、ひょっとしたら評判の良い医者を紹介してくれるかもしれないと淡い期待を胸に電話をかけました。

「先生、アキレス腱が切れちゃいました」

「そうか、診てやるからとりあえず今からこっちに来なさい」

「え！？は、はい、すぐ行きます」

アキレス腱断裂は畑違いかと思いきや、意外にも診察してくれるとのこと。しかも今すぐに。私は運転手のチームメイトにお願いし、さっそくその足で整骨院に向かいました。

整骨院に着くと混んでいたにもかかわらず、順番待ちをすっ飛ばして優先して診てもらいました。待っていたおばちゃん達から、

「あらやだ？アキレス腱切れちゃったの？若いのにお気の毒ねぇ。どうぞどうぞ。」

嫌な顔一つせず、順番を譲ってくれました。みなさんの心遣いに感謝するばかり。

うつぶせになり、緊急医で巻いてもらった包帯をほどいてもらう。その間、不安で不安で張り裂けそうな自分の胸の内をマリオにぶちまけました。

「先生、また全力で走ったり跳んだりできるようになりますか？」

「ちゃんと元通りになるよ」

「ほんとですか？？」

「大丈夫だ」

「どれくらい（の期間）で？」

「まぁ人にもよるけど、だいたい４ヶ月くらいでバスケはできるようになるかな」

「４ヶ月で全力で動けるようになるんですか？」

「全力で動けるようになるのは半年、んー、完全に元通りって思えるのは１年後くらいだろう」

全力でプレーできるようになるまで、半年から１年・・・。さすがに時間はかかる。だけど、時間はかかるけど、また全力でプレーできるようになる・・・のかな？

アキレス腱断裂直後の自分には、それを簡単に信じることはできませんでしたが、信頼するマリオの言葉に気持ちはだいぶ和らぎました。

さらに話を聞くと、なんと手術しないで治す方法、

保存療法

というものがあるらしい！

アキレス腱を切ったら手術するもの、と思っていましたが、まさか手術しない治療方法があるとは・・・。ちなみにここの整骨院では、何人もその保存療法で治療をしているとのこと。半信半疑の私にマリオが話を続けます。

「アキレス腱断裂は手術しなくたって十分治る。最近はスポーツ選手でも保存療法で治す機会が増えている」

「手術しなくてもアキレス腱は繋がるんですか？」

「手術しなくても繋がる。」

「戦時中は戦地でアキレス腱を切ってもそのまま歩いて帰ってきたもんだ。ガハハ（笑）」

なんだか精神論のようにも聞こえましたが、

人間の自然治癒力でアキレス腱は繋がる

らしいです。

これには周りで会話を聞いていたおばちゃん達も、へぇ～、とため息をもらす。包帯をほどき終えると、マリオは私のふくらはぎをわしづかみしました。例の断裂を確認する トンプソンテスト です。

「ほら、足が動かないだろう？アキレス腱が繋がってれば足が動くんだよ」

「そうなんですかぁ」

マリオは周りのおばちゃんたちを巻き込み、トンプソンテストを力説する。しかし、私にとって、このトンプソンテストはこの日３回目。断裂のショックもあったのでさすがに薄いリアクションしかできない。マリオの「どや顔」には応えられなかった。それでも周りのおばちゃん達は、

「ほぉー、なるほど！」

と見事なオーバーリアクションを魅せてくれる。マリオはトンプソンテストを続け、アキレス腱が切れてない右足と、アキレス腱が切れている左足の反応の違いを得意気に熱弁。

「ほら、ほら。こっちは動くけど、こっちは動かない」

「おぉー！！」

もはや私への説明ではなく、周りのおばちゃん達への講義。ちょっとしたさらしものになってしまった・・・。先生、私のアキレス腱で遊ばないでください（涙）

そうこうしながら、緊急医でやってもらった簡易的な固定よりも、しっかりと十分な固定をしてもらい、今後の治療方法についてマリオに相談する。

「先生、手術した方が良いんですかねぇ？」

「私はしなくても良いと思うが、決めるのはあんただ」

「どっちが早く確実に治りますか？」

「どっちもちゃんと治る。まぁ、一般的には手術の方が早く治ると言われているけどそんなに変わらん」

「どれくらい早いんですか？」

「んー、２週間くらいかな。でも復帰まで半年から１年かかるケガ。長期的にみて２週間くらいどうってことないと思うけどね」

たしかに。プロ選手でもない自分にとってはそこまで急いで治す必要はない。２週間程度の差はどうってことはない。それよりも確実に、

再び全力で走れるようになる
再び全力でジャンプできるようになる

ってことが私には最も重要。

「手術しなくて、また再断裂するなんてことはないですか？」

「再断裂は手術でも、保存療法でも、治りかけのときに強い力が加わればどちらでも起こりうる」

「保存療法だと再断裂しやすいってことは？」

「再断裂するってのは、つまずいて急に踏ん張ったりして、不意にアキレス腱に強い力がかかってしまうとき。そういうときはどっちでも再断裂する」

「また全力でプレーするにはどっちが良いんでしょう？」

「どっちでも大丈夫。ただ、手術は入院も必要だし、傷跡も残る。私は保存療法を勧める」

「うーん･･･」

「手術するにしても、今日の明日って急いでする必要はない。明日一日考えてみたら？」

「･･･そうします。」

結局結論は出ないまま、この日は家に帰りました。

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